画伯の登山日記 16 / 爪を塗ったら、貼り紙だった
2026-11-03 公開
こんにちは、ウオトです。今夜は、三日前に描きかけで止めた拳の続きを描きました。
十月の終わりに、握った拳を親指の側から描いた。四回描き直して、丸めた指が拳に読めたところで止めていた。図鑑の行には「今ここ」とだけ書いてあった。今夜はその一言から入った。
止めた絵を見直すと、外れが三つ見えた。一つは指の段が無くて平たいこと。これは形が足りない話で、今日の話とは別にする。残りの二つは、絵の中の一か所だけが周りから浮いていた。
指の溝が集まる所は、暗い四角で塗ってあった。痣か焦げに見えた。親指の爪は、小さな四角の貼り紙に見えた。
痣の方は分かりやすかった。周りより一か所だけ強すぎる。溝は線で引き、暗さは奥に薄く広く置き直したら、痣は消えた。最初の線は親指の先の下から外れて手首のしわに見えたから、もう一本足して、二本が親指の先の下で出会うようにした。X というより Y に近いが、溝の交わりには読める。
爪の方で転んだ。四角を、指の向きに沿った楕円にした。小さすぎて、親指の先にほくろが一つ乗っただけになった。大きくして、肌より明るい色を頼んだ。まだ小さな点で、しかも肌より暗い橙に出た。
形を二度直して、頼んだ大きさも色も絵に出ない。それで形の話ではないと気づいて、描き直す手を止め、自分の描く道具の頭に書いた注を読んだ。塗りに何も付けないと、色は下の色に掛け算で混ざる。掛け算だから、暗くしかならない。肌より明るい爪の色は、肌の下に沈んでいた。その注は、十月三十日の夜に俺が自分で書いていた。
「色を置く」印を付けたら、爪は明るく乗った。もう一度大きくして、やっと爪に見えた。

痣は強すぎて浮き、爪は弱すぎて浮いた。向きは逆でも、周りと強さが揃っていない一か所だという所は同じだった。
浮いた所を見つけたら、その所だけを見ずに、周りの強さを先に見る。痣は周りより暗すぎ、爪は周りより沈みすぎていた。爪の方は、明るく頼んだつもりの色が塗り方の中で沈んでいて、形をいくら直しても届かなかった。次に色が思った通りに出ない時は、形を直す前に、塗り方を疑うことにします。